花言葉を君に。~あふたーでぃず~


先に入場した和泉くんの後ろ姿を見て、思った。


あたし、和泉くんのこと好きだよ。


これからずっと一緒にいようね、って約束したこと、後悔してないよ。


いつか子供と一緒に、ずっと仲良く暮らそうね、って。


先輩と出逢って、一度はフッたけれど本当に好きになって、付き合いだして今、結婚する。


そんなこと、あの頃のあたしはきっと望んでなかった。


きっと、結城先輩と一緒になることだけの望んでた。


そして、楓にぃにに出逢うこと。


それだけが唯一の希望だった。


そんなあたしを愛してくれたのは和泉先輩で。


だからあたしは・・・


「よし、行こうか。紫苑ちゃん。」


隣で少し緊張気味の尚紀さんが優しく微笑んだ。


「はいっ。」


あたしは笑顔で答える。


重く大きな扉が、今開く。


チャペルに射す、暖かな光。


真紅のカーペットの上を一歩、一歩進んでいく。


通り過ぎた席に、見つけた。


振り向くことはできない。でも、確認なんてしなくてもわかる。


あたしを待つ和泉くんと目があった。


一筋の涙が頬を伝った。


< 4 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop