花言葉を君に。~あふたーでぃず~



「紫苑、素敵だね。」


小さく照れくさそうに笑った楓にぃにのその言葉は、あたしの記憶を蘇らせた。


あたしの名前を素敵だって言ってくれたときのこと。


「ありがとう。」


「あ、そうだ!ちょっと待ってて。紫苑に渡したいものがあるんだ。」


楓にぃにはそう言って一旦部屋を出て行った。


足音が遠のいて、和泉くんが呟いた。


「やっぱ、勝てねぇな・・・。」


「ん?何?」


「いや、なんでもない。つーかなんで、そんなにぎこちないわけ?」


「・・・別に。なんか、ほら。兄妹だけどもういい大人だし。それぞれの家庭があるわけで。・・・それでじゃない?」


嘘。


あたしきっと、まだどこかで楓にぃにのことを・・・


「お待たせ!」


息を切らせて入ってきた楓にぃにの腕のなかには、


「ブーケ?」


「うん。スイートピーのブーケなんだけど、綺麗でしょ?」


スイートピーのピンクと白と薄紫色の花が、カスミソウに囲まれていた。


「綺麗・・・」


「俺からの気持ちだよ。紫苑。」


ずるいよ。


ほら、またそうやってあたしを惑わせる。


そんな楓にぃにのことが、好きだよ。


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