いつでも王子様



「逃がさない。絶対に璃乃は離さない」

「か、薫……っあ、……んっ」

優しく舐めながら、何度もその痕跡を残すような痛みを落とし、薫はどこか必死に私に縋っている。

スカートに手がかかり、抵抗する間もなく脱がされると、まだ何も脱いでいないはずの薫の固い熱を感じた。

私を欲しているとわかる証を感じて、ふっと力が抜けた。

今まで、私にそんな欲を持っている様子なんて見せたことなかったくせに、どうして今になって私を抱こうとするんだろう。

大学に入っても、女の子から声をかけられることがあると言っていたのに。

自慢げに話すその様子に、私は何度も泣きそうになっては笑ってごまかしていたのに。

「……薫?どうして?彼女に振られたの?」

確か今は彼女はいなかったはずだけど、もしかしたら、と思って聞いてみた。

もしもそうだとしたら、私は悲しみを紛らわせるためだけのはけ口なのかもしれないけれど……訳も分からず薫に抱かれるなんて悲しすぎる。

大好きな人だから、どうしてなのか理由が知りたい。

たとえ私のことが好きじゃないにしても、納得して抱かれたいけれど……どっちにしても、私にはつらいことには違いない。

私を愛してくれない人に抱かれるなんて、悲しくてたまらない。

知らず知らず流れていた涙が私の頬を濡らし、ひくひくと声をあげながら薫を見上げた。

薫に抑えられていた両手はいつの間にか解放されていたけれど、薫に抱きしめられたままの体は身動き一つできない。

溢れる涙をこらえることもできず、私はきゅっと目を閉じた。

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