いつでも王子様
まるで私の事を心から欲しているような力で押さえつける薫の力に屈してしまいたい。
薫を好きだという自分の気持ちに素直になり、彼に抱かれたいと、体を委ねそうになった時。
「璃乃……俺のものになってよ。もう、逃げてばかりの人生なんて嫌なんだ」
「え……?」
耳元に落とされた薫の言葉に、はっと目を開けた。
私の顔の横に肘をつき私の頬を優しく撫でる薫は、弱々しい瞳で私を見つめている。
そして、その唇を私の耳に這わせながら「璃乃、璃乃」と呟き私の存在を確かめる。
「か、薫?」
「璃乃は俺の側にずっといるって思っていたのに、勝手に違う高校に行って、俺がいない世界で綺麗になって……。俺がどれだけ勉強を頑張って、バスケでレギュラーをとったって、お前はいつも俺のずっと先を歩いていて……」
「そ、そんな、勝手にって……薫の方が勝手に彼女を作ったから私は……」
薫の言葉に鋭く反応した私は、涙を流しながら訴えた。
私はずっと薫の側にいたかった。
それに、いつか薫の恋人として愛されたかったのに、それを拒んだのは薫のほうだ。
「薫が私を置いて、先に行っちゃったのに……綺麗な彼女と一緒に楽しそうに笑って、私なんていなくても平気だって見せつけて」
「それは、違うっ」
「じゃあ、どうして私以外の女の子と付き合ったりするのよ……」
私の体に覆いかぶさったままの薫に、途切れ途切れの声を投げかけた。
止まらない涙のせいで、顔中が濡れてしまい視界だってぼやけている。
普段ならこんな顔、薫に見せることなんてできないけれど、気持ちが昂ぶった私にはそれすらどうでも良くて、ひたすら薫を傷つけるような言葉で責めた。