いつでも王子様
薫は膝の上に私を乗せ横抱きにすると、コツンと額と額と合わせた。
あまりの距離の近さに体は震えるけれど、既に私の体は薫から落とされた刺激によってその心地よさを得たせいか、逃げたいとも思わなくなっていた。
めくれあがっていた私のシャツを整え、自分の腕の中に私を抱きしめた薫は、低い声で呟いた。
「竜也お兄ちゃん……それが俺にはどうしても越えられない大きな壁だったんだ……」
「え?」
思いがけない言葉に、はっと視線を上げた。
「壁って、どういうこと?」
「あの日、璃乃が内祝いのお菓子を持ってうちに来たけど、俺にとってはそれが苦しくて悔しくてたまらなかったんだ」
私の首筋に顔を埋め、思い返すような声で話し出す薫は、その顔を私に見せたくないのか、ギュッと私を抱きしめて拘束する。
視線だけで薫を見ると、その頬が微かに震えているように見えた。
私を抱きしめる力も半端なものではなくて、何かと戦っているような切なさを感じる。
「薫……」
薫の腕の中で、私はすっとこの身を彼に預けた。
今、ちゃんと彼の話を聞かなければ、私たちに未来はないような気がして、心を整え、薫の言葉をしっかり受け止めようと思った。
そんな私の動きに反応して束の間硬くなった薫だけど、私に抗う様子がないと気づくと、彼からも力が抜け、首筋に安堵にも似た吐息を感じた。
そして、薫の言葉が続いた。