いつでも王子様



小学生の頃、私は手術を受けた。

それは、命に係わるような大きな手術ではなく、鼻の奥にあるアデノイドという器官を切除するもので、その後の私は健康体そのもの。

軽い風邪をひくことはあっても、何日も寝込んだり病院に通い続けなければいけない病気を患うこともなく元気に成長した。

私は物心ついたころからお稽古事のように定期的に病院に通い続け、私の体を心配し過ぎる両親を安心させるように明るくふるまい、勉強もピアノも一生懸命頑張っていた。

神経質に私に気を配る母の涙がさらに増えるような気がしていたからだ。

『璃乃、今日も給食全部食べたし、体育で逆上がりができたよ』

決して弱音は吐かず、周囲に気を遣う、よくできた子供だったと思う。

今振り返れば、可愛げのない小学生だったかもしれないと苦笑すら浮かぶけれど、当時の私は周囲に気を遣わせないようにいつも表情をつくるような女の子だった。

そうしなければ、家族、特に母の心が崩れてしまうのではないかと。

絶えずびくびくしていた。

そして手術が無事に終わり、私はそれまで通院に使っていた時間を友達と遊ぶ時間へと変え、年相応の子供時代を過ごした。

放課後友達と公園で遊んだり、みんなと家でお菓子を食べたりすることが楽しいことだと知ったのもその頃で、それ以来私は元気に遊びまわる明るい女の子に変わっていった。

そんな中で、私は近所に住む薫という同級生の男の子と親しくなり、大学生になった今でもその関係は続いている。

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