いつでも王子様




その後高校に入学してからは、私と薫が会う機会はなかなかなかった。

吹奏楽部に入部した私は朝早く登校し、帰宅も遅かった。

高校まで自転車で通う日々は、彼との接点をなくすには十分で、会えない毎日に慣れることも簡単だった。

そして、彼は中学の時と同じバスケ部に入部。

長身で運動能力に長けている点を生かし一年の秋にはレギュラーを掴んでいたと聞く。

御園 薫というアイドルのような名前は、名前に負けない容姿とバスケ部での活躍を周囲に知らしめ、それは別の高校に通う私の耳にも届いていた。

同時に、薫が出るバスケの試合を見に行く女の子の多さも話題になっていた。

「相変わらず、人気者だね」

そう呟く私の胸は痛んだけれど、既に薫は遠い存在。

単なる幼馴染の私が手を伸ばしても絶対に自分のものにはならない人。

悲しさを忘れるふりが上手になり、私は作り笑顔と嘘が得意な女の子になった。

そして私たちは、それぞれの高校時代を楽しみ、近所で偶然会ったり、家族のみんなで食事をする時に顔を合わせば仲良く話す程度の関係を続けていた。

私の高校三年間は、薫とは全く別の時間を送った切ない時間だった。

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