甘いシュガー
あれは、入学して3ヶ月経った頃だった。
満開の桜を見ながらゆっくりと登校する。
思わず綺麗な桜を携帯で写真を撮る。
「こーら、何やってんだよ」
前から愛しい先生の声が聞こえた。
ニヤケた顔をばれないように先生の方を向く。
「あと5分だよ?
間に合う?」
先生が腕を組ながら聞く。
この仕草…。好き…。
「間に合うか…分かりません…」
小さい声で私は言う。
「湯川のクラスの先生って誰だっけ?」
湯川…。
先生、私の名前覚えてくれたんだ。
たったそれだけのことなのに嬉しい。
「おーい?」
不思議そうに先生は聞く。
「あ、えっと。長江先生です…」
「そうだったな!」
先生は少し微笑んで
私の頭の上に手を置いた。
「よし、走れ!」
先生は子供のように笑って私に向かっていう。
「はい!」
「よし、行け~!」
私の背中を押してくれた。
先生に言われたように私は必死で走る。
教室に入ると丁度チャイムが鳴った。
休み時間廊下に出ると先生がいた。
「あ…。先生」
「お、湯川!間に合って良かったな!
お前走るの遅かったからヒヤヒヤしたよ」
先生は私に笑いかける。
どうしよう…。幸せ。
先生が私のこと『お前』って言ってくれた。
それだけで幸せと思ってしまう私はまだまだかな…?