イジワルなキミの隣で


それぞれお目当ての先輩がいるらしく、頬を真っ赤にしながらさりげなく存在をアピっている。


なんだか見てて微笑ましい。



そしてそのままカラオケに移動しようとした時。



「萌絵ちゃん?」



背後から知った人の声が聞こえてビクッと肩が揺れた。



出来れば会いたくなかった


聞きたくなかった人の声。



振り返ることが出来ないのは


その隣にいる人を意識しているから。



「やっぱり萌絵ちゃんだ。なんだか久しぶりだね」



前に回り込んで、固まる私の顔を覗き込む智沙先輩。



「あ、お、お久しぶりです」



目を泳がせて、しどろもどろになりながら答えた。



ドキドキと激しく騒ぎ立て始める鼓動。



反応したくないのに、私の意思とは無関係にどんどん激しさを増して行く。



あれ以来まともに顔を見ていない。



必死に思い出さないようにしていたというのに、どうして今日に限って。


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