腕枕で朝寝坊
*お礼SSまとめ*同棲編
*思い出した切なさ
お礼SS
~思い出した切なさ~
同棲編
美織視点
紗和己さんのお仕事に海外出張はつきものだ。
同棲を始めて3ヶ月。一緒に暮らし始めて初めての長期出張はドイツに2週間だった。
ひとり日本に残される2週間。
本音を言えばもちろん寂しいけど。
でも、お仕事なんだから仕方ないし。それに今はパソコンやスマホで簡単に連絡が取り合える。毎日、顔を見ながら電話だって出来ちゃう。
そうやって過ごしてればきっと2週間なんてあっという間。
付き合う前は1ヶ月離れてる事だってあったんだし。
お互いをそうやって励ましながら見送り見送られ始まった紗和己さんの海外出張。
紗和己さんは仕事の合間を見付けては小まめに連絡をくれた。
私も心配を掛けないように、それに明るく応える。
紗和己さん、こちらは大丈夫ですよー。それより体に気を付けてね。お仕事頑張ってね。
そうやって何度もパソコンの動画通信に向かって笑い掛けた。
そうして10日が過ぎた頃。
いつものようにパソコンの画面越しにお喋りをしていると、紗和己さんがふと、零すように言った。
「……毎日こうやって言葉を交わして、顔も見れているのに…やっぱり触れられないって、寂しいですね。美織さんのぬくもりが恋しいです」
困ったように微笑んで言われたその言葉に、一生懸命こらえていた切なさが堰を切った。
「……寂しいよ…早く帰ってきて、紗和己さん……寂しいよお………」
ボロボロと零れる涙が止められない。
彼を心配させたくないのに、一度溢れだしてしまった切なさは、愛しさとか寂しさとか全部巻き込んで涙になって落ちていく。
そんな私を、私と同じとっても切ない色で見つめていた紗和己さんが画面に向かって手を伸ばし、優しく優しく伝えた。
「……帰ったら必ず、その涙をぬぐってあげます。だからあと3日だけ、待ってて下さい」
その優しい約束が。
たった2週間の離ればなれが。
私は切なくて切なくて。
いつも幸せばかりで忘れていた胸の痛さを久しぶりに思い出す。
貴方の隣で過ごし与え続けてもらったぬくもりの大きさを、嫌というほど知った。
夏の夜。
~思い出した切なさ・完~