腕枕で朝寝坊
*妻ごはん
お礼SS
~妻ごはん~
新婚編
紗和己視点
ある日、美織さんがションボリとして買い物から帰ってきた。
「…みかんが高くなった……もう春だから……」
どうやら春の訪れと共に大好きなみかんが去り行く事に美織さんは落ち込んでるようだった。
悲しそうなその姿には胸が痛んだけど、もうこれで彼女の食生活を乱すモノは居なくなるのだと思うと、僕は密かに安堵した。
しかし。
みかんの季節が去ってから約一ヶ月後。
最近、リビングのテーブルに必ず干しあんずがある事に僕は気付く。
………まさか。
いやでも、干しあんずならみかんみたいにお腹いっぱいになるまで食べられないし。
ちゃんと食事さえ摂っていればおやつに毎日食べるくらい。
そんな僕の思惑が甘かった事を知るのは、それから一週間後、妻の変化に気付いた夜の事だった。
「……美織さん、ちょっと痩せましたよね…?」
「え?そう?」
「………僕がいない間、ちゃんとご飯食べてますか……?」
「…えっ…」
「まさか、干しあんずで済ませてませんよね?」
「………………………」
「………………………」
「………あ、あんず好き………」
「美織さん!貴女ってひとは!!」
後日、お義母さんの話で知ったのだけど、どうやら美織さんは昔から好きなものを延々と食べ続ける癖があるらしい。
そういえば高校生の時は毎日昆布のおにぎりを食べてたって佐知さんが言ってたっけ。
とにかく。
僕は大切な妻の健康を守るべく、今では干しあんずの管理をしている。
「あんずは1日半袋まで。お昼ごはんをちゃんと食べなきゃ無しですよ」
「紗和己さんキビシイ……」
美織さんの悲し気な視線が痛いけど、例え恨まれても男には守らねばならないものがあるのです。
~妻ごはん・完~