腕枕で朝寝坊
*第二回夫婦喧嘩は勃発していた
お礼SS
~第二回夫婦喧嘩は勃発していた~
新婚編
佐知視点
それはうららかな冬の午後。
突然わが友人美織から掛かってきた電話は緊迫に染まっていた。
「佐知!!聞いて!!紗和己さんが…紗和己さんがヒドイのーうわああん!!」
「どうしたの美織、落ち着いて!!社長と何があったの!?」
「あのね!あのね…!!」
ただならぬ友人の声で話されたその内容は……………実にくだらなかった。
美織の説明によると、先日、社長の友人が旅行に行くと云うのでその間ペットを預かる事になったらしい。
そしてやって来たミニチュアダックスフンドの子犬、ポコはそれはそれはそれは可愛かったそうな。
最初はふたりして可愛がりまくっていたけど……3日目の今日、これが原因で夫婦喧嘩が勃発したようだ。
以下、美織の説明によるふたりの会話。
※※※
紗「……美織さん。ちょっとポコちゃんのコト構いすぎじゃないですか?」
美「えーそうかなあ」
紗「最近、僕よりポコちゃんと触れ合ってる時間の方が長い気がして…ちょっと寂しいです……」
美「えーえーそんな事ないって。だったらさ、言わせてもらうけどさ、紗和己さんだってこないだポコちゃんにキスしてたじゃん。あれちょっと妬ける」
紗「あれは…!!あれは博愛のキスですよ!美織さんにするキスとは全然違います!」
美「そうかなー」
紗「そんな事言ったら美織さん。僕知ってるんですよ」
美「えっ」
紗「美織さん、僕が帰り遅かった夜に……ポコちゃんをベッドに連れ込んだでしょう」
美「!!!だって…!!だってあれは…!あの日は寒かったんだもん!!」
紗「いくら寒くったってポコちゃんはオスですよ!!それを僕の居ぬ間にベッドに連れ込むなんて…!!」
美「さ、紗和己さんのエッチ!!変な言い方しないで!!ポコちゃんはまだ子供なんだから!」
紗「美織さんはポコちゃん禁止です。今日は僕がポコちゃんと遊びます」
美「えーっヒドイ!!紗和己さん独り占めなんてズルいよー!!わーん!!」
※※※
「ね、ヒドイでしょ!自分だってチューとかしてるくせに私にばっかりヤキモチやいて!独り占めまでするなんて信じられないよ!!」
プンスカと怒る美織の声の後ろで
「佐知さーん、誤解ですよー」
「ワンワン!!」
社長の弁明の声と元凶の可愛い声が聞こえた。
私はスマホを耳に当てたまま生温い目になると、一瞬でも本気で心配したバカな自分に後悔しながらそっと通話を切った。
後日、美織から掛かってきた電話によると、ふたりはあれからすぐ仲直りをしたらしい。
そして、すっかり預かった犬に魅了されたふたりは、今、ペットを飼うことを検討中だとか。
そこで私は世話焼きな友人として一言。
「犬や猫より熱帯魚とかにしときな」
「なんで?」
「熱帯魚ならチューも出来ないしベッドにも連れ込めないでしょ」
私の進言を聞いた美織は電話の向こうで恥ずかしそうに笑っていた。
~第二回夫婦喧嘩は勃発していた・完~