腕枕で朝寝坊

※プリンセスは誰のもの?


~プリンセスは誰のもの?~


※新婚編
※紗和己視点





お盆なので夫婦揃って実家に帰省したのだが。


母が美織さんを可愛がり過ぎて困る。



「美織ちゃんは可愛いわねえ。本当に可愛いわねえ」



……うちの血筋の女性は、母をはじめ勝ち気なタイプが多い。姉ふたりもそうだし、姪の杏でさえしっかりその性格を受け継いでいる。


だから、美織さんみたいなホンワカしたタイプが可愛くて仕方ないのだろう。その気持ちは分からなくは無いけれど。



「美織ちゃんのためにフルーツバスケット用意しちゃった。メロンもマンゴーもあるからね、いっぱい食べてね」

「はーい」

「後でいっしょにお買い物行きましょう。好きなもの何でも買ってあげる。服?靴?アイスも買ってあげるわよ」

「わーい」



あまりにも猫可愛いがりすぎやしませんか。


「ああもう、そんなに果物ばっかりたべさせて。晩ごはんが食べられなくなっちゃいますよ」

「美織さんはお腹を冷やしやすいんだから、あまり風通しのいい服は駄目ですよ」


そんな風に僕が口を出せば

「紗和己は過保護ねえ」

なんて、不満そうな母の言葉が返ってくる。


……なんだろうこの疎外感は。なんだか寂しい。


まあ、嫁姑問題が蔓延る世の中に於いて、自分の妻と母の仲が良いのは素晴らしい事だと思う。


そう思って温かく見守ろうと思った僕だったけど。


「うちに泊まってる間、美織ちゃんは私と寝るから」


母さん、ちょっと美織さんを独占し過ぎです。


気が付けば美織さんはやけに愛らしいパジャマとナイトキャップまで被ってニコニコしてるし。


「お義母さんに買ってもらったのー」

「……そうですか」


なんかもう完全に母の玩具になってる気がしてきた。




「仲が良いのはいいけど、ちょっとやり過ぎじゃないですかね。まるっきり小さな子供扱いじゃないですか」


寝室に向かうふたりの背中を眺めながら、父にそうぼやいて振り返ってみると


「…………………すまない」


気まずそうな顔をした父の手には可愛いクマのヌイグルミが。


「うちの会社でテディベアを扱いはじめたんで、美織さんにあげようとひとつ持ってきたんだが……」


…………………父さん、あなたもですか。


「別に子供扱いのつもりじゃないんだが……あげてもいいかね……?」

「……………どうぞ」



どうやら美織さんは水嶋家の庇護欲を刺激するDNAを持っているらしい。


連日大好きなフルーツに囲まれ可愛いらしい服を着せられ手にテディベアを抱いた美織さんは、今や水嶋家の小さなお姫様だ。


……仲が良いのはいいことだ。でも。


父と母に猫可愛いがりされニコニコご機嫌な美織さんを見て、僕はちょっぴり心の中で妬く。


僕が子供扱いすると怒るくせに、と。


家に帰ったら僕だけのお姫様に戻ってもらいますからね。




~プリンセスは誰のもの?・完~
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