腕枕で朝寝坊
*私たちの娘
お礼SS
~私たちの娘~
※家族編
※美織視点
※遅れてきた父の日ネタ
※花海7歳 光月5歳
長女の花海は紗和己さん似だと思う。
真面目で誰にでも優しい性格、なんでもソツなくこなしてしまう優等生タイプ。
ちょっとおしゃまさんでお洒落が大好きなのは私の影響かな?
けど何より、私の事が大好きな所が紗和己さんにソックリだと思う。
そして次女の光月はおそらく私似。
絵を描いたりブロックや粘土で何かを創る事が得意で、時々周囲を驚かせるような物を創ってみせる芸術タイプ。
何かを創り出すのが好きなことや、独自の感性を持っている部分は、私と少し似てると思う。
ただ、マイペースで破天荒な性格は私でも計り知れないけど。
6月の父の日。
娘たちが紗和己さんに贈ったプレゼントは、そんなふたりの性格をよく表していたと思う。
「パパ、いつも家族のためにありがとう」
そう言って花海が渡したのは、毎日コツコツとお手伝いをして貯めたお小遣いで買ったネクタイ。
買うときは私もいっしょに付き合ったけど、選んだのはもちろん花海で。
紗和己さんの好みを踏まえたかなりセンスの良いものを選んだと思う。さすが雑貨屋オーナーの娘。
すごく喜んだ紗和己さんは早速次の日に仕事にしていってみんなに自慢しまくり、親バカぶりを発揮したらしい。
そして光月からのプレゼントはと言うと。
「パパ、ハッピーバースデー!」
「違いますけどありがとうございます」
なんか間違った祝福と共に渡されたのは…………光月曰く『はたらくパパ』の粘土人形。
紙粘土で作られ色を塗られたそれは、非常に難解な形をしていて。
…………正直、最初見たときは模様つきのバナナに見えた。
その日の夜。
部屋に飾ったバナナ……もとい、『はたらくパパ』人形を眺めていた紗和己さんがポツリと喋りだした。
「月ちゃんのセンスは独特で難解ですね。………けど、不思議なことにこの人形、見慣れてくると僕に見えてくるんです」
その言葉につられて、私も人形をまじまじと眺める。
確かに。縦長のシルエットに暖色の多い色使いはどこか紗和己さん的だ。
「特徴を思いっきり誇張してディフォルメした感じ。これ、紗和己さんをよく知ってないと作れないよね」
もらった時はどんな笑みをしていいか分からないと云った紗和己さんの笑顔だったけど。
今は心から幸せそうに目尻を下げている。
「ふふ、花ちゃんといい月ちゃんといい、僕の事をちゃんと分かってくれてるみたいで嬉しいです」
そうしてしばらく蕩けそうな笑顔をこぼしていた紗和己さんだったけど。
「……月ちゃんの愛情表現はちょっと難しいですよね。将来、そんな月ちゃんのメッセージを上手に受け取ってくれるパートナーと出会えるといいんですけど」
少し遠い目をして、ぽつり呟いた。
「気が早いな、紗和己さん。まだまだ先の話じゃない」
笑いながら返した私だったけど、その気持ちは痛いほど分かる。
花海も光月も、いつか目に映る景色を誰かと愛でられるような、そんな幸せを知って欲しいと名付けた。
光月の目に映る世界を理解してあげられる人はどれだけいるんだろうか。
次女の内に広がっているだろう無限の世界。
何かを創る喜びを知っている立場からすると少し羨ましくもあり。
娘を愛でる母としては少し心配でもあり。
けれど、今はまだ幼いふたりが健やかに育つ事がとても大事で何より嬉しい。
いつか大切な娘たちが自分の道を歩み始める時。
親として力になり導けるようになろう。
そしてきっと、その想いは紗和己さんもいっしょ。
「父の日は感謝の日ですね。子供が親に感謝して、親はそんな健やかに育ってくれた子供に感謝する……僕らは幸せですね」
紗和己さんの言葉に深く頷いて、親である事のありがたさを噛みしめた。
~私たちの娘・完~