きみの右手にうさぎエプロン
だから、いつか教えて、きみのことを。
きみが言いたくなったら。わたしになら話してもいい、って思えるようになったら。
わたし、ずっと待ってる。
ここが逃げ場所ではなく、きみの新しい居場所になるまで。
わたしのとなりが、きみのもうひとつの帰る場所になるまで。
ここで待ってる。
わたしは必ず、きみの味方になりにいく。
「おやすみ、恵くん」
囁きながら指先で頬に触れれば、彼はまた小さく唸って寝返りをうった。
ポケットの中のチョコレートではなくて。二度と消えない罪でもなくて。
今彼の右手に握りしめられているものが、わたしの大切なたからものであること。そんなちっぽけなことがただただ、
しあわせだな、と思った。
きみの右手にうさぎエプロン。小さな小さな、無償の愛を。
-END-