きみの右手にうさぎエプロン
――きみ、何年生?
――……1年。
数ヶ月前の仕事帰り。ふらりと立ち寄った夜のコンビニで初めて出会った彼は、まだ15歳だった。たったの15歳。
まだ忘れられない。握りしめたその手が、小刻みに震えていた。彼は罪を犯そうとしていた。
チョコレート2粒分の、罪を。
「あの日もさあ、晩ご飯カレーだったよね。作り置きのだったけど」
そういえばあのときも恵くんは傷だらけだったなあ。口の中まで切れていて、ルウが沁みて痛かっただろうに。
無言でガツガツ食べて、おかわりまでして。
わたしの晩ご飯だったのに、わたしの分なんてこれっぽっちも残してくれなかった。
「……」
「おいしい?」
「……うん」
無口な彼は、包帯をぐるぐる巻かれた右手でスプーンを握り、こくりと頷いてみせる。
ソファ横のテーブルで、ふたり向かい合うようにして頬張るカレーライス。家族で囲む食卓と雰囲気のよく似たそれが、彼は好きなんだ。たぶん。
こうして見るとふつうの男の子。どこにでもいる高校生。
中高一貫の有名私立の制服を着ていて、それなのに薄い耳たぶにピアスの銀色をちらつかせている彼だって。