きみの右手にうさぎエプロン
 


15歳。いや、もう16歳になってるかもしれないけれど。……どちらにしたって。

わたしと10近くも離れた、まだ、こども。




――お腹が空いてるなら、わたしが何か食べさせてあげる。


だからおいで、と。あの日、わたしは初対面の男子高生の右手を引いて、自分のマンションへと連れて帰った。

ポケットの中に突っ込んだ代金未払いのチョコレートを取り出して。
一生洗い流すことのできない真っ黒な泥が、その右手の傷と一緒に身体に溶け込んでしまわないように。

だって、こんなに。
こんなに残酷なことって、あるもんか。


――あんなやつ、おれが捕まって恥かけばよかったんだ。


わたしに手を引かれながら力なく彼が呟いたのは、わたしに向けた言葉ではなかった。

彼が犯そうとした罪は彼のための罪であり、他の誰かを貶めようとした罪。震えながら、怯えながら、それでも犯さずにはいられなかった罪。


殴る。殴られる。傷つける。傷つけられる。
そして居場所がなくなって、コンビニに逃げ込んだ。誰かを憎むあまり、危うく手を汚してしまいそうになった。

わたしが見つけたのは、そこまでボロボロになったこどもだったのだ。


 
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