反響ノイズ
こちら側としては有難いからいいけど…
窓ガラスに屈折した月の光が部屋の中に何本もの線をつくる。
私は窓際までいってその存在を見せつけるように浮かぶ月を眺める
それは、この世界にはふさわしくない綺麗なものだった。
さっきと曲が変わりラブソングのそれを止めて、ベッドフォンを外す。
と、
「…っ」
瞬間、知らない声が、音が、崩壊したダムの水のように頭に流れ込む。
普通の人には理解されないだろう、理解されたくもない。
聴こえるのは、「ウザイ」「キモい」「死ね」といった
私達が人を傷つけるためだけに発せられた言ノ葉たち
私に届く人の汚い心の裏側
笑顔に隠された真実とでも言おうか
いくら耳を塞いでも、どんな場所にいても聴こえる。
…いや、聴こえてしまう、か。