天使ラビィの不思議な珠


「……いい。もう、いいよ」


唇を噛んでサユちゃんは俯く。

その顔が絵本のラビィの顔に似ているような気がして、ボクは胸の辺りが痛くなった。

どうしよう。
サユちゃんがラビィみたいになったら。

ボクを見ても笑ってくれなくなったらどうしよう。


「サユちゃん」


ボクが、小さな声で名前を呼ぶと、サユちゃんは笑った。
笑ってくれたのに、なぜだか嬉しくない。

なんで笑うんだろう。
サユちゃん、悲しそうなのに。

ボクは、笑顔が好きだ。
だけど、そんな悲しそうな笑顔なら、嫌だよ。

そのうちに、笑いたくても笑えなくなったらどうしよう。
ラビィみたいになったら。

イヤだよ。
サユちゃんはボクの大事な友達なんだから。

いつも優しくて、にこにこして。
だけど、悲しいときだってあるはずなのに。


「……サユちゃん、泣いて!」

「え?」

「泣きたいとき泣いて」

「サトル……くん?」

「泣いてよ!」


顔が熱い。
ボクなんだか、すっごい恥ずかしいこと言ってる。

だけど、胸の辺りがぐるぐるってなってて、ボクは自分の声を止められない。
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