天使ラビィの不思議な珠
「サトルくん、どうしたの?」
困ってしまったボクに話しかけてくれたのは、長い髪をうさぎみたいに結っているサユちゃんだった。
サユちゃんは、ボクより一つ上の年長さん。
優しくていつもニコニコしているから、保育園の人気者なんだ。
「ねぇサユちゃん、これ読める?」
「読めるよ。読んでほしいの?」
「うん」
「いいよ。えっとね」
サユちゃんは、ボクから絵本を受け取ると床に広げた。そしてボクと並ぶように座って読み始める。
サユちゃんの声は、なんだか甘ったるい。砂糖がたくさん入ったミルクみたい。
「あるところに、よくわらう、女の子のてんしがいました。名前はラビィ」
スラスラと、ボクがてこずっていたところを読む。
絵本には、天使の羽根を生やした小さな女の子が白いおヒゲの神様から、白い珠をもらう絵が描いてあった。
「……渡しました。『これは、ラビィの心と同じ。大事にして、いつも持っているように』」
心ってこんなのじゃないよ。
ボク、ずかんで見たんだ。人間の体の中が書いてあった。
ピンクで変な形のもの。あれがしんぞうだって書いてあったもん。
こんな白い珠じゃないよ。
「サトルくん、きいてる?」
「あ、うん。きいてるよ。サユちゃん、続き聞きたい」
「うん。わかった」
サユちゃんは、小さく笑うとまた話しはじめた。
ボクはは夢中になって、サユちゃんの声を聞いた。