恋の糸がほどける前に

「……っん……!?」


さっきまで、私の頬にあった手。


それがいつのまにか私の後頭部に回っていて、端正な顔が近づいてきても、私のショート寸前の頭では何も考えることができなかった。


言葉を紡ぐ寸前の開きかけの唇が、貴弘のそれに塞がれてようやく、私の脳内では手遅れすぎる警鐘が鳴り響く。


「……や……っ!」


さっき全力で押し返さなかったことを後悔した。

だけど、がっちり押さえこまれてしまってからでは全てが遅かった。


それでもありったけの力を込めて抵抗すると、貴弘は静かに唇を解放してくれて、それと同時に唇を伝っていった雫の感触に、自分が泣いているんだと気付く。


「……ど、して」


「お前がからかってるのかなんて訊くからだろ」


「だって……っ!」

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