恋の糸がほどける前に

隣を歩く水原も相当怖がってる。

声の感じで痛いくらい伝わってくる。


私の問いに「しらねーよ」と返してきた水原の声は、微かに震えている気がした。


……うん、芽美。

水原は頼りなさそうだ、と結衣ちゃんを選んだのは正しかったよ。

……水原、どうやらホラー系は苦手らしい。

もしかしたら私より怖がってるんじゃないの、コレ。


頼りになる気がこれっぽっちもしないよ!!


ただ、暗い廊下を歩いているだけ。

それなのに、どうしてこんなに怖いんだろう。


「キャーーッ!!」


「っ!?」

「なになになに!?」


ふいに遠くから聞こえてきた叫び声に、水原が驚いたようにびくりと身体を揺らした。

私はといえば、不安を抑えようと泣きそうになりながらもなんとか言葉を押し出す。

……というより、何かを声に出していないと余計に怖くて、黙っていられなかった。



「ねぇ、今の何?何があるの?これ、歩くだけのやつじゃないの?もしかして途中でお化けが出てくるやつなの?ちょっと、ねぇ、お化けが出るなんて、そんなの聞いてないよー!!」

< 114 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop