恋の糸がほどける前に

「ち、違うよ!!これは、その、怖さを紛らわすためっていうかっ!」


バッ、とお互いに勢いよく手を離して叫ぶように言う。

間違ってない。

うん、嘘はついてないよね!


「えー?照れることないのに。祝福するよ?」


「だから、そんなんじゃないんだってば!……ね、水原!」


同意を求めて水原の方を見る。


『当たり前だろ。怖すぎただけ!』


とか、そんな言葉が返ってくると思って。

援護してくれると思って。



なのに。


「……ちょっと、水原?」


水原は何も言わないまま、ぼんやりしていた。


この人、どうしてこんな時にぼーっとしてるの!?


「ほらほら、水原くんは否定しないよ?いやー、怪しいとは思ってたけど、やっぱりね」


「……怖さを紛らわすだけ、だよな」


クラス委員の言葉に反論すると言うにはあまりに威力が弱い。

やっと口を開いた水原の口から出てきた言葉は、まるで自分に言いきかせるような呟き。

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