恋の糸がほどける前に
♯ 2 雨と恋の雫
♯2
「いってきまーす!」
靴を履きながら、玄関の端に置いてある傘立てから自分の傘を抜き取ってドアを開けた。
「いってらっしゃーい」という元気のいい両親の声が、ドアを開けた瞬間にうるさくなった雨の音にも負けずに耳に届く。
朝とは思えないほど太陽の光が雲に負けている、どんよりした空模様とは正反対の晴れやかな声に見送られながら、バサッと傘を開いて鞄を肩に掛け直し、歩き出した。
家から学校までは、そんなに遠くない。
道にできた水たまりはさすがに少しだけ鬱陶しかったけど、普段の私からは想像できないくらい時間に余裕を持って家を出られたから、ぴょん、と大きな水たまりを避ける足取りも心なしか軽やかな気がした。
くるくると、手持ちぶさたに手の中で傘の柄を回すと、当然だけどくるくると雨を防いでくれているビニール部分の模様も回る。