恋の糸がほどける前に
深い青の滲んだ黒の空。
瞬く星の位置がどうだとか、あの星とあの星にはどれだけ素敵な物語があって、とか。
そういうの、私は全然知らないけど。
ただ純粋に、綺麗だと思った。
ふわりと、優しく髪を揺らした夜の風が運んできたのは、ひっそりとした秋の匂い。
────そっか。
もう、8月も終わるんだね。
「秋祭りなんて、早いね。まだこんなに暑いのに」
「本当だよな」
クスクスと微かに零れた笑い声が、ふたりの間に心地よく響いた。
そして、まるで示し合わせたようにふっと同時にその音が止まる。
考えることなんてなかった。
自然に、視線は空から隣にうつっていた。
「……一緒に行けるか?」
緊張したような、少しだけ強張った声。
鼓膜を震わすその声が、すごくすごく、深く。
ジン、と胸に響いた。