恋の糸がほどける前に

雫先輩、どこ行っちゃったんだろう……?


意気込んで探しに出てきたはいいけど、どこに向かうべきか迷う。


「……とりあえず、教室かな」


ひとり呟いて、私は3年生の教室に向かって歩き出した。


吹奏楽部も全体練習に入ったのだろうか。

さっきまでいろいろな場所からバラバラの音が鳴っていた校舎に、迫力のある澄んだ音楽が響き始めて、重厚な音が耳に心地いい。


どこかできいたことがある曲だなぁ、と思いながら階段を下り、雫先輩の教室がある階にたどりついて、ひとつひとつ教室のドアから顔を出してみる。

どこの教室にもパラパラと人が残ってはいたけれど、その中に先輩の姿を見つけることはできなかった。


……どこに行っちゃったんだろう……。


すっかり行く当てを失ってしまった私は思わず、はぁ、と息を吐きだした。

なんとなしに階段をおりて廊下を歩いて、きょろきょろ周りを見回して。

そんな動作を繰り返しているうちに、生徒玄関まで辿り着いてしまった。


開け放たれたドアから入りこんでくる風が、ふわりと私のスカートを揺らす。

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