恋の糸がほどける前に
……なーんて。
そういえば、なんて嘘。
同じ補習の教室に水原がいて、そんなふうに平然としていられるわけない。
赤点でよかった、なんて、一瞬血迷ったことを考えた自分に驚いた記憶がある。
「赤点ってこんな簡単に取れるものだったんだね」
「ほんとにな!ちゃんと解答欄は全部埋まってんのにほぼ間違ってるとか逆にすごいって」
笑いごとなんかじゃないのに、あははと笑う水原につられて、私まで「だよね」と笑ってしまう。
でも、本当に『赤点』なんて漫画の中だけの世界だと思ってたよ。
解答用紙に大きな赤い色で『25』と書かれて返ってきたときの衝撃、あれは絶対忘れない。
「ていうかさ、サッカー部は赤点のペナルティないの?私のとこ、赤点取ったら1週間部活に出入り禁止なんだけど」
こんなペナルティ、テストの前に知っていたら絶対もっと頑張ったのに、と嘆いて、私の部活より厳しそうなサッカー部に所属している水原にそう訊く。
だけど水原は、なぜか自慢げに笑った。
「うちでそんなことしてたら誰ひとり残らない事態になるし」
「……何?サッカー部っておばかさんが多いの?」
「は。赤点取ってるやつに言われたくねーよ」
「それもそうか」