恋の糸がほどける前に
♯ 3 好きな人*side 亮馬*
♯3 *side* 亮馬
「貴弘くんとは、別れたんだ」
今にも泣きだしそうな顔をしてそう言った雫さんに、俺はただ驚くことしかできなかった。
────放課後の昇降口。
タオルを教室に忘れたことに気がついて、部活の休憩中に校舎に戻った俺は、そこでひとり立ちつくしていた雫さんを見つけて声をかけた。
俺の中では、雫さんと貴弘さんはあの海に行ったときのまま。
はたから見てもお似合いの仲のいい恋人同士のままだと思っていたから、「最近貴弘さんとはどうなんですか」なんて救いようのないくらい無神経な声のかけ方をしてしまった。
別れた、という雫さんの答えに絶句してしまい、しばらく言葉が出てこなかった。
「す、すいません。俺」
傷をえぐるような真似をしてしまったことに大きな後悔が胸を襲い、我に返った俺は慌てて頭を下げた。
すると雫さんはすぐに「気にしないで」と笑う。