恋の糸がほどける前に
潤んだ瞳を向けてそう言われ、俺は意味が分からず戸惑った。
「……葉純ちゃんのこと、好きなんでしょう?」
「え」
突然の言葉に驚いて、目を瞠る。
どうして、と思ったけど、雫さんは確信を持っているようだった。
言葉が出て来ない俺にその確信を深めたのだろう、雫さんは涙をこぼしながらも小さく笑う。
「あのふたりの間に入っていける人なんていないね。……水原くんだったら、もしかして上手くいくんじゃないかと思ったけど、……やっぱり、無理だったね」
「あの、ちょっと待って下さい。……すいません、俺、よく分かってないんですけど、雫さんは、貴弘さんと三浦が付き合ってるって言ってるんですか?」
三浦からはそんな話、きいていない。
もともと、そういう類の話はお互いにあまりしないから、そういう事実があっても口にしないだけかもしれないが。
でも、貴弘さんには雫さんがいた。
それなのに、雫さんから貴弘さんを奪うような真似、するか?
少なくとも俺が知っている彼女は、平気な顔でそんなことをできるヤツじゃない。
「私だって直接ふたりから聞いたわけじゃないけど……、見ちゃったんだもん」
雫さんがゆっくりと俯いた拍子に、再びぽたりと涙が空を静かに落ちていく。
「見た、って何を……」