恋の糸がほどける前に

たとえ同じセリフだったとしても、からかうような声色で言ってくれたなら、きっと何か返事ができた。

でも、雫さんの声には少しもそんな色は浮かんでいなかったし。

涙が似合わないくらいのまっすぐな視線を向けられて、どうしたらいいのかわからずにすっかり混乱してしまう。


「……葉純ちゃんのことを信じても、傷付くだけだよ」

「そんなこと」

「ううん。絶対、傷付く。水原くんはなにも悪くないのに」

「もしも貴弘さんと三浦がそういう関係なんだとしたら、俺だって悪者になれますよ。二人の邪魔、してるんですから」


今日だって、祭りに一緒に行こうと三浦を誘ったのは俺だ。

もしもふたりが付き合っているなら、邪魔しているのは間違いない。

三浦からしたら、気が合う男友達と行くだけ、という軽い感覚でオッケーしたのかもしれないけど、貴弘さんからしたらいい気はしないだろう。


「……お人よしだね」


クス、と呆れたように笑った雫さん。

さっきまでの、感情の読めない雫さんは正直ちょっと怖かったから、いつもの雰囲気に戻ってくれてホッと息をついた。


「そんなことないっすよ」

「ううん、そんなことある。……私、次は水原くんみたいな人を好きになりたいなぁ」

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