恋の糸がほどける前に
私の学校は修学旅行はじめ他の学校には当たり前にある行事がなかったりするのだけど、それでも学校行事はちょくちょく行われている。
それも、なんだかちょっと変わった学校行事が多い。
春の体育祭はないけど、田植え体験学習とか言って、全校生徒で水田の多い地域まで繰り出してみたり。
秋の文化祭はなくとも、ついこの間は植えた米、そして近くの畑にお邪魔しての野菜の収穫行事があったばかりだ。
そして今日は、天体観測の会。
しかも、学年ごとではなくて学校全体。
高校の近くの山にある合宿棟に1泊して、星を見る。
ただそれだけの行事。
星を見るのはいいのだけど、その合宿棟までがなかなかの山道で、文化部女子には辛かったりする。
雨天中止の行事だから、途中でも雨が降らないかなぁ、なんて芽美はずっと言っていたのだけど、皮肉なことに小雨で、中止となるところまでは降らなかった。
私は芽美とはちがってそこまでこの山道が億劫だったわけではないので、中止を願ったりはしなかったけど。
……でも、あんなふうに仲よさそうにふたりでいる水原と雫先輩を見るくらいだったら、大雨になってしまえばよかったのに、と今更思った。
「ふー、せめてもう少しなだらかな坂だったら楽なのに」
坂を登りきり、合宿棟に入りながら芽美がため息交じりにそう言った。