恋の糸がほどける前に
「なだらかでも、長い坂は結構キツくない?」
「そっかー」
じゃあやっぱり廃止するしかないよこんな行事。
なんてあっさり言ってしまう芽美に、思わず苦笑。
「柳田ー、そう言ってくれるなよ。校長がいちばんお気に入りの行事だぞ、観測会」
「知りませんもーん。学校からここまでバス出してくれたらいいのに」
傍で聞いていたらしい担任も苦笑してなだめるけど、芽美は相変わらずの物言いだ。
「じゃあ、こういうのはどうだ?まぁ、先生としてはあんまり信じちゃいないんだが、生徒の間では結構有名らしいぞ」
「?」
「この合宿棟のどこかに、鍵穴に鍵がささったままの小部屋があって、そこの窓から流れ星を一緒に見ることができた男女はずっと一緒にいられるらしい」
ドヤ顔でそんなジンクスを披露され、芽美は一瞬きょとんとした顔をしていたけれど、すぐにぷぅと頬を膨らませた。
「全然興味ないですそれっ!!」
「え!?そうなのか!?女子生徒は大体食い付いてくれるんだけどなぁ」
「彼氏とか好きな人がいない女子にはなんの意味もないじゃないですかっ!ふんだ。やっぱりこんな行事廃止です!いこっ、葉純」
「え」
ぐいっと手をひかれ、歩き出した。