恋の糸がほどける前に
「はははっ!そうか、それは悪かったな!……でもきっと、満点の星空を見たらそんなこと言えなくなるぞー」
後ろから聞こえた先生の声も芽美はスルーして、全校生徒が集まるホールに辿り着いた。
……クラスごとになっているから、並んだ列に雫先輩がいないのは当然なのに。
水原が、雫先輩ではなくてクラスの男子と一緒にいるのを見て、泣きたいくらいホッとした。
これくらいのことで泣きそうになって、私、これから大丈夫なんだろうか。
私がまだまだ子どもだからかな。
……自分の気持ちを殺してまで好きな人の幸せを願うなんてこと、できないよ。
ねぇ、水原。
戻って来てよ。
私の隣を当たり前にしてよ。
水原が雫先輩と一緒にいるところをみるだけで、心がぎゅーって誰かに掴まれてるみたいに痛くなる。
苦しくなる。
いつまでも勇気のない自分を仕方ないと諦めて、足踏みして。
それはきっと、甘く見ていたんだ。
こんな失恋を。
自分の想いさえ告げられずに終わる恋の痛みを。
バカだ、私。
失恋がこんなにも辛いものだと、知ろうともしなかったんだから。