恋の糸がほどける前に
毎日見ているはずの夜空が、こんなにも圧倒的に胸に迫るものだなんて知らなかった。
「……晴れてよかったね」
あんなにも雨を願っていた芽美さえ、そう言った。
夕方まで断続的に降り続いていた雨。
だけど、今ではその雨雲は通り過ぎていってくれたらしく、空にはほとんど雲は残っていなかった。
綺麗な黒をかすめる白の靄(もや)は微かには残っていたけれど、ゆっくり流れていくその動きに、風の涼やかさを感じた。
「……葉純、私ね」
「ん?」
話しかけてきた芽美に、私は視線を横に向けた。
けれど、芽美は空を見上げたまま、私のほうを見ようとはしない。
「葉純が水原くんのことを好きだって気付くずっと前から、思っていたことがあるの」
「……え?」
芽美がこんなふうに直接私の恋愛に触れてきたのは、本当に久しぶりだったから、驚いてしまった。
貴弘とのことも、水原とのことも。
水原と行ったお祭りの後、芽美には全部話していた。