恋の糸がほどける前に

「……ごめん。先に行ってて。すぐ行くから」


私がそう言うと、芽美は一瞬心配そうな顔をしたけれど、頷いてくれた。


ぱたぱたと、芽美の足音が遠ざかっていく。



「……」



ずっと、芽美の言葉を考えていて。


信じなきゃいけない人。


一番最初に思い浮かんだのは、貴弘だった。



「……っ」


ねぇ。

私、今までどれだけ貴弘のこと傷つけてた?


水原に彼女がいるって分かる前も、分かってからだって。


まっすぐにくれる貴弘の気持ちを受け入れられないことがつらくて、そんな自分の辛さを言い訳にして。


私、いつも下を向いて笑ってた。

いつだって、自分の爪先に向けて笑ってた。


最後に貴弘と心から笑いあえたの、いつだったかな?


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