恋の糸がほどける前に
私、バカだ。
本当に大バカ者だ。
大事な人に、こんな傷付いた顔をさせて、こんなに痛みを我慢させて。
この関係を手放せないでいたのは私。
貴弘から手をはなせないでいたのは、私のほうだ。
ごめんね。
ごめんね。
たくさん傷つけて、ごめんね。
好きになってくれて、ありがとう。
「……貴弘、私ね」
言わなきゃ。
早く、貴弘から手をはなさなくちゃ。
想いだけが先走り、言葉よりも涙が出た。
喉が嗚咽をこらえて震える。
きゅ、といちど唇を結び、そして口を開いた瞬間、だった。
「!」