恋の糸がほどける前に
「思ったより綺麗にしてるんだな」
きょろきょろと興味深そうに私の部屋を見回す水原に、なんだか恥ずかしくなった私は、忘れ物がないことを確認したカバンを肩にかけ、「ハイハイ、行くよ!」と水原の背中を押して部屋を出た。
パタン、と後ろ手にドアを閉める。
「なんだよ。別に時間ないわけじゃないし、もうちょい見せてくれたっていいじゃん」
「今度ゆっくり遊びにくればいいでしょ?いつでも来られるんだし」
嬉しそうなお母さんと、ちょっぴりさびしそうな顔をしたお父さんに見送られて家を出て、水原と並んで学校に向かいながらそんな話をする。
ていうか、私の部屋ってものすごく普通だし、見せるようなもの特にないんだけどなぁ。
なんで水原はこんなに残念がってるんだろ。
「……いつでも行っていいんだ?」
「え?うん、どうぞ?前までは貴弘なんて毎日のように出入りしてたし」
お兄ちゃんの部屋にくるたびにちょっかいかけに私の部屋にも顔出していくんだよね、あいつ。
鬱陶しいなぁって思ってたけど、これからはそういうこともないんだって思うと、やっぱりさびしい。
「……」
「どうしたの?黙っちゃって」