恋の糸がほどける前に

不意に黙り込んでしまった水原。

どうしたんだろうと顔を覗き込むけど、ふいっと顔を背けられてしまった。


「……どうしたの、って。……わかんない?」

「わかんないから聞いてるんだけど」


私の答えに、水原ははぁ、と溜息を吐いて。

仕方ないなぁ、とでも言いたげに、笑った。


「まぁ、今日くらいはいっか」


「?」


今日くらいはいっか、の意味はまったくわからなかったけど。


たしかに今日は、特別な日。


貴弘や雫先輩が、卒業する日、だ。


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