恋の糸がほどける前に
卒業式のあと、部活ごとに集まる時間があるから、私はそのときに雫先輩に花束と後輩皆で書いた色紙を渡すことになっている。
貴弘とのことがあってから、雫先輩とはまともに会話できていないけど……。
でも、雫先輩のことが大好きなのは変わらないし、いつも優しくてあたたかい雫先輩を心から尊敬しているのも、本当だ。
だから、せめて私は笑顔で雫先輩を送り出したい。
たくさん傷つけてしまったかもしれないけど、それでも、笑顔でいよう。
それくらいしか、私にはできないから。
雫先輩も貴弘と同じように、地元を離れて新しい生活を始めるのだと、部活の先輩から聞いた。
もともと国立大学志望だった先輩は、見事志望校に合格したのだそう。
それを聞いたとき、涙が出るくらい嬉しかった。
貴弘も、雫先輩も。
今まで私を傍でいつも支えてくれた人が、自分の道を歩き出そうとしてる。
それは少しさびしいけれど、だけど、私の前を歩いていくその背中が、いつだって私の強い憧れでいてくれるの。
私も頑張らなきゃ、って、そう思わせてくれるんだ────。