恋の糸がほどける前に
「雫先輩、本当におめでとうございます」
「ありがとう。……あのね」
雫先輩は一度そこで言葉を切って、何か言いあぐねているようだったけど、すぐに顔を上げて微笑んだ。
「たくさん大人げないことしちゃって、ごめんね。
……私、葉純ちゃんのこと、大好きだよ。こんな私にいつも笑顔をくれて、ありがとう」
「っ!」
雫先輩の言葉に驚きすぎて何も言えないでいると、雫先輩はふわっと笑って。
「またね!」
そう言うと、くるりと私に背を向けて、3年生たちの波に戻っていった。
「……っ」
『大好き』
『ありがとう』
雫先輩がくれた言葉が、心の中であたたかく広がっていく。
……本当は、不安だった。
雫先輩と、最後までぎこちないままになってしまうんじゃないかって。
私の笑顔は、鬱陶しいだけなんじゃないか、って。
……でも。
「……私も雫先輩のこと、大好きです」
たくさんの大切なことを教えてくれて、
たくさんの優しさをくれて、
本当にありがとうございました。
心から溢れ出しそうなほどの温かい気持ちを噛みしめて、私は一度、雫先輩に向けて深く頭を下げた。