恋の糸がほどける前に

「……貴弘さんってホントカッコいいよな」


人にまぎれて見えなくなる貴弘の背中を見送りながら、水原はぽつりとそう呟いた。


「俺なら、あんなふうに言えないと思う。あんなふうに自分の大事な人を託せるって、ホントに、強いよ」

「……水原」


まっすぐに前を見ていた視線を、水原はふいに私に向けて。

強くぶつかった視線に、胸の奥がキュンと鳴く。


「……俺のとこに来てくれて、ありがとな」


「え!?そ、そんな、私の方こそ、だよ……」


やけに真剣な水原の目にまっすぐ見つめられて、照れくさい。

なんとか言葉は返せたけど、ドキドキしすぎて心臓がおかしくなりそうだ。


「……行くか」


ふわっ、と優しく微笑んで、水原が私の手を軽くひいた。

その手を強く握り返して。

私もにっこりと、笑顔を返して。


ふたり並んで、歩き出す。


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