恋の糸がほどける前に
「……俺さ、葉純とは手ぇ繋いでるだけでもすげー幸せだけど」
「うん、私も」
「でも、やっぱりたまにはもうちょっと近づきたいって思うこともあって」
「う、ん……?」
私が頷いたと同時に、グッと強く手をひかれた。
気付けば、人のいない校舎の影。
「水原?」
いきなりどうしたんだろう、と名前を呼ぶと、繋いでいた手を引き寄せられて、気付けばギュッと抱きしめられていた。
「……みず、」
「好きだよ、葉純」
「っ!?ど、どうしたの、急に」
抱きしめられながら、嬉しいよりもびっくりしてしまう。
「もう絶対離さないから。……ずっと、俺の隣にいろよ」
囁くような声に身体が痺れたように動けなくて。
息をするのが、精一杯で。
それでも、幸せを心いっぱいに感じながら、私は大きく頷く。
「……好きだ」
もう一度告げられた言葉。
じんわりと優しく強い温かさを心に広げたその言葉と共に、ふわりと触れた唇に。
私は静かに、目を閉じた。