恋の糸がほどける前に


「え!ええええーーっ!?は、葉純(はすみ)が恋……っ!?」


信じられない、という心の声が手に取るように分かる声色で目を丸くして大きな声を上げたのは、親友の柳田芽美(やなぎだ めみ)。

放課後、私の家に遊びにきていた芽美に「好きな人ができたみたい」と打ち明けたら、こんな反応だった。

失礼だよね?

……こんな反応だって、ちょっと予想してたけど!


「ちょっ、声大きいって!」


シーッ、と唇の前で人差し指を立てそう言うと、驚いた顔のままフリーズしていた芽美は、ハッとしたように両の掌で口もとを覆った。

可愛いなその仕草……。

じゃなくて!


「誰!?だれだれだれ!?葉純が好きになるなんて、よっぽどスポーツ万能で勉強も全国トップクラスで超絶美形な優しいけど男らしい人なんだろうね……!」

「!?」


ほわん、と夢見るような表情で、キラキラした瞳でまるで少女漫画に出てくるヒーローみたいな特徴を上げた芽美に、唖然としてしまう。

……これ、本気で言ってるから芽美ってこわい。

ふわふわの見た目を裏切らない、性格も仕草も声も、女の子らしさをあらん限りに詰め込んだような美少女は、思考までもがふわふわと宙に浮いていた。

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