恋の糸がほどける前に
♯ 3 アイツの隣
♯3
「────あ、雨止んでる」
「おー、ほんとだ」
想像以上に美味しかった、カップル限定メニューを食べて満足した私と水原。
帰りの電車から降りて駅を出ると、さっきまで降っていた雨はあがっていた。
駅から漏れる明かりや街灯、たまに通る車のライトが、アスファルトにできた水たまりに反射しては水面が白く光る。
人の多い駅は窮屈だったけど空調は完璧だったから、外に出た瞬間肌に触れたモワッとした空気に、思わず苦笑が零れた。
……梅雨だなぁ、なんて当たり前のことを今更思わせられる、雨は止んだとはいえまだまだたっぷり湿気を含んだ空気。
大きく息を吸い込むと、やっぱりまだ雨のにおいがした。
「早く夏にならないかなー!」
すーはー、と意味もなく深呼吸をしてそう言うと、水原にあははと笑われた。
「お前、常にそれ言ってるよな。そんなに夏、好きなの?」
「えー?私そんなに言ってる?……もちろん、夏は大好きだけど」