恋の糸がほどける前に
「………あれ?でもうちの学校にそんな完璧な人いたかな?え、葉純、どこで知り合ったの?ナンパはダメだよ?どんなにカッコよくても連絡先なんて教えちゃダ」
「待って待って待って。ナンパじゃないから。バリバリうちの学校の人っていうかクラスメイトだから」
放っておいたらどこまでも喋り続けそうな芽美の言葉を遮って、私は思わず言い聞かせるような口調になりながらそう言っていた。
すると、芽美は大きなまん丸の瞳をさらに大きく見開いて、やがて小さく首を傾げると、きょとん、という表情で私を見つめた。
「……え?で、でもうちのクラスにスポーツ万能で勉強もトップクラ」
「だからね、それは芽美の妄想でしょ?私が今まで好きな人もいなかったのは理想が高すぎるからじゃないから!ただそう思える人がいなかったでいうだけ、で……」
……自分自身の恋バナなんて生まれてこの方したことないから、急に恥ずかしくなって自然と語尾は音量がダウンしていった。
「……男子とかかわりがなかったわけじゃないのに、今まで誰も好きにならなかった葉純が初めて好きになった人、かー。
あ、だから最近なんか楽しそうなんだね。髪もちゃんとして学校来るし。……え、なんか誰、っていうのはもちろんだけど、理由の方が気になるかも。
葉純、どうしてその人のこと好きになったの?」