恋の糸がほどける前に
「お前のせいだろーが。……なんだよ、こんな時間に」
「やー……、お母さんからの差し入れをね」
でも必要なかったね、これは完全に。
おそらく夕飯は雫先輩とラブラブしたのだろうから。
「いらないなら持って帰るからいいよ。なんか……、さすがにごめん」
そりゃあね、こんな場所でチューしてる方が悪いと思うけど、想い合うふたりにも色々都合ってものがあったのかもしれないし。
ふたりからしてみれば、私は間違いなく雰囲気ぶち壊しのお邪魔野郎だ。
……まぁ、貴弘にとってはあんまり問題じゃなかったのかもしれないけど。
私を見つけたとき、余裕で笑ってたし。
「……ったく、本当だよ。おばさんの料理は美味いからもらっとくけどさ」
「もらうんだ」
あはは、と思わず笑うと、貴弘は私とは正反対にため息をこぼす。