恋の糸がほどける前に
「何だよお前、ついこの前まではそんなの気にしてなかったじゃん。高校生になった途端になに恥ずかしがってんの?」
不機嫌そうな顔のまま、貴弘が言う。
納得できない、と顔に書いてある。
……そんなに一人で一晩過ごすのがさびしいのか、コイツは。
「別に私、恥ずかしがってるわけじゃ」
「……好きなヤツができたくらいで、大人ぶりやがって」
私の言葉なんてコイツは聞いちゃいないらしい。
私の話をがっつり遮って、けっ、と面白くなさそうに呟いた。
……ていうか!
「好きな人とか、それ今関係ないじゃん!!」
そりゃあ、もしかしたらちょっと平均よりは遅い初恋かもしれないけど。
でも、初めて好きな人ができたっていう、ただそれだけで大人ぶってるなんて言われたくない。
こいつの思考回路、私には理解できないんですけど!
「関係ある」
「無いっ!!」
「……つか、おまえの好きなヤツって誰?」
「それこそ関係ないでしょ!絶対あんたにだけは教えないっ!」