恋の糸がほどける前に
♯ 1 夏、到来!
♯1
「うわあっ!すごい人ーーっ!!」
思わず叫んだら、「相変わらず落ち着きのないヤツ」と貴弘に鼻で笑われてしまった。
「うるっさいなぁっ!!」
だって、仕方ないじゃん。
……さんさんと降りそそぐ太陽の日差しのもと。
キラキラと輝いて目の前に広がるのは、まぎれもなく海!
こんなの、落ち着いてなんかいられるわけない!
あっという間に梅雨は過ぎ去り、夏の暑さが到来して。
待ちに待った、夏休み!
貴弘と雫先輩の提案で、皆で海にくることになったんだ。
高1の私は課外授業、高3で受験生の貴弘たちは夏期講習と、みんな相変わらず勉強は大変だけど、それでもやっぱり自由な時間は多いから嬉しい。
「じゃあ着替えたらここにまた集まる感じで」
「了解っす!!」
お兄ちゃんの指示に、しゅぴっと敬礼してみせて、
「よーし、着替えに行きましょうっ!」
私は、芽美と雫先輩に声を掛けて歩き出した。