恋の糸がほどける前に
「あれ、敷くやつどこ入れたっけ。亮馬、ビニールシートどこ?」
「あ、それならこっちだと思います」
後ろから聞こえてくるのは、もちろん貴弘とお兄ちゃんと、……そして水原の声。
絶対貴弘にだけは好きな人教えない!
……なんて固く誓ったはずなのに、水原と海に行ける、なんていう魅力的な誘惑には勝てなくて。
『どうせならおまえの好きなヤツも連れて来いよ。好きなヤツと海だぞ?誘わなきゃ損だって』
貴弘のその言葉に結局従うことになってしまった自分の弱さが悔しいけど、こんな機会滅多にないし。
しかも、泊まりだよ。
雫先輩の親戚の方が、持っている別荘のうちひとつを貸してくれたんだって。
こんなの行かない手はないよね!
男子の中では水原だけが年下だから、大丈夫かなってちょっとだけ心配だったけど、水原はすでにお兄ちゃんや貴弘と打ち解けているようで、むしろ楽しそうだったから、まずは一安心だ。
「……ていうか、よく考えたらこんな美少女ふたりと一緒とか、自分どうかしてる」
今日のために新調した水色の水着に着替え終わった私は、芽美と雫先輩を見て思わず真顔でそう呟いていた。