恋の糸がほどける前に

「何言ってるの?全然太ってないくせに。……いいなぁ、その胸ちょっとわけて?」


「!?」


芽美の直接的な言葉にびっくりして、我ながらすごい早さでパーカーを羽織った。

チャックは上までばっちり上げる。


「もったいなーい。隠すの?」

「隠すよ!」


私と芽美がきゃあきゃあと盛り上がっている横で、雫先輩はにこにこ笑っていてくれていた。

本当に天使だ、この人……っ!




「おまたせー!」


すでに水着に着替えている男子のところに戻ると、レジャーシートの上に荷物が置かれていて、ご丁寧にパラソルまで差してあった。

……こんなの持ってたんだ。


「おおー、やっぱり華やぐねー」

ニコニコ笑顔で言ったのは、お兄ちゃん。

貴弘が同じセリフを言ったらきっと「この変態っ!」と即座に突っ込むところだけど、のんびりまったり口調のお兄ちゃんが言うと、まるで下心を感じないから不思議だ。

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